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ゴルゴ13の名作を語る1:「サンクチュアリ」

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  • 2016年9月25日
  • 読了時間: 3分

これは良いなあと思ったゴルゴの名作回を語るだけのシリーズ。ネタバレしまくり。

第1回はコンパクト版130巻から、「サンクチュアリ」

オセアニアの島国ナウトロ共和国(ナウル共和国がモデル)は、国土を構成するグアノ(リン)の輸出によって国民が働かなくても生活できる国である。島国にも関わらず、漁業はほとんど行われない。働くのは公務員と政治家ぐらいである。

そこに住む老人、ウランガは昔ながらの漁を行って生活する"変わり者"である。最近は、おそらく観光船から落ちて流れ着いたと思われる記憶を失った少年と共に漁に出ている。一方、その弟ヌアンガはナウトロの大統領であり、漁に出る兄を疎ましく思っている。

グアノが掘り尽くされた後の大地を前にして、二人は口論する。

「もう売れるものなど何も無い、荒廃したこの土地がこの国の真の姿だ」

「いや、まだ売るものはある。何を売るかはアイデア次第だ」

そのアイデアとは…一つはパスポートの乱発だった。そしてそれはテロリストに悪用され、アメリカに経済制裁を受けていたのだった。そしてもう一つ。国を追われた重要人物の亡命先としての機能である。

その島にはある人間が潜伏していた。軍部クーデターによってサウン連邦(おそらくミャンマーがモデル)の元副主席サヤ・タンである。彼は整形手術によってナウル人チヒロンゴとして生活し、アメリカの穀物会社によってバックアップを受けていた。自分が首相としてサウンに戻ったとき、契約農地を最大限用意するという約束のもとに…。

国土を売りつくしたナウトロ。国土を売る前にクーデターが起こったサウン。

軍事独裁と化したサウンの現状を聞かされ、サヤ・タンは言う。

「国民は今でも貧しい暮らしに甘んじておる…彼らに豊かな生活をさせてやるためにも、わしは現政権を倒さねばならん!」

さて、ゴルゴはサウン連邦をクーデターで乗っ取った現首相、ターキン将軍にサヤ・タンの抹殺を依頼される。ゴルゴはハッカーを雇って、ナウトロの国民台帳データ(DNAなどあらゆる情報が含まれる)がどこに集積されているのか探らせる。そして、ターキン将軍に「サヤ・タンの住居の焼却と、サヤ・タン死亡の公式発表」を行うよう指示する。

その発表と時を同じくして、ゴルゴはロケット砲を使って国民台帳データ管理施設を破壊する。これによって、サヤ・タンは整形前の顔や指紋のデータを失う。しかも住居なども焼却されてしまったため、DNAを照合することもできない。サヤ・タンはデータ上、消滅してしまったのである。

その報告を受けた後のターキン将軍のセリフ。

「この国は、貧しく、未開かもしれん…。百年後もおそらくはそうだろう…。だが、外部の人間が熱帯雨林を切り開き農地を開墾し、すべてを収奪して去ったとしたら…今は豊かになるだろうが……百年後、この国は荒れ地となり…"国家"そのものが消え去っているに違いない」

さて、これは「国民のためを思う国家」と「国家のためを思う国家」の二項対立だろうか?クーデターを起こして貧しい生活を受け入れたターキン将軍は単なる国家主義者で、パスポートを乱発したり亡命者の隠れ家として国を利用したりすることで豊かな生活を維持させたヌアンガは人民の人だろうか。

ナウトロに未来はない。サウンには暗いが未来がある。一人の人間のあり方は10年、20年で考えても良いかもしれない。だが国家の在り方は、100年、200年の観点で考えなければならないのだ。そして人間が社会的動物である以上、国家のあり方は人間の在り方の基本である。帰属のない人間など、ゴルゴぐらいしかいないだろう。


Comentarios


​書いてる人:シュヴァルツ

​かつて神聖ヴィンラディック帝国で官房長官をやっていたという経歴を持つ既知の外。ヘヴィーメタルをこよなく愛する、ヴィンラディックメタリストでもある。

​なんか連絡とりたい方はTwitterのDMとかでどうそ。

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​人よ、既知の外たれ。ヴィンラディックたれ。

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